商標登録、5年と10年どっちがお得?後悔しないための選び方を徹底解説!

新商品や新サービスの顔となる大切なネーミングやロゴ。それを守るために不可欠なのが「商標登録」です。
いざ商標登録をしようと手続きを進めると、「登録料の納付期間」を5年か10年かで選ぶ場面が出てきます。「え、どっちを選べばいいの?」「何が違うの?」と迷ってしまう方も多いのではないでしょうか。
この選択は、あなたのビジネスの状況や将来の計画によって「正解」が変わってきます。
そこで今回は、商標登録の期間で後悔しないために、5年と10年それぞれのメリット・デメリット、そしてどちらを選ぶべきかを、分かりやすく徹底解説します。
◆ そもそも商標登録の期間って?基本をおさらい
まず知っておきたいのは、商標権の存続期間は原則として10年間であるということです。
「じゃあ、なぜ5年が選べるの?」と疑問に思いますよね。
これは、10年分の登録料を一括で支払うか(10年登録)、それとも**前期・後期に分けて支払うか(5年登録)**を選べる「分割納付制度」があるためです。
- 10年登録: 10年分の登録料を最初に一括で支払う。
- 5年登録: 最初に前期5年分の登録料を支払い、5年が経過する前に後期5年分の登録料を支払う。
つまり、「5年登録」は5年間しか権利がないわけではなく、10年間の権利を前提とした料金の支払い方の違いなのです。
◆【一目で分かる】5年登録 vs 10年登録 徹底比較
では、具体的にどちらを選ぶのが良いのでしょうか。それぞれのメリット・デメリットを表にまとめてみました。
| 比較項目 | 5年登録(分割納付) | 10年登録(一括納付) |
|---|---|---|
| 初期費用 | 安い | 高い |
| 総費用(10年間) | 割高になる | 割安になる |
| 手続きの手間 | 5年後に更新手続きが必要 | 10年間手続き不要 |
| 権利の安定性 | 更新忘れで権利失効のリスクあり | 10年間、権利が安定 |
| 将来の柔軟性 | 事業変更に対応しやすい | 対応しにくい |
これを踏まえて、それぞれのメリット・デメリットを詳しく見ていきましょう。
5年登録のメリット・デメリット
【メリット】
- 初期費用を抑えられる: なんといっても最大のメリットは、最初の支払額を低くできることです。特に、スタートアップや個人事業主の方にとっては大きな魅力でしょう。
- 事業の状況変化に対応しやすい: 「この事業、まずは小さく始めてみたい」「今後どうなるかまだ分からない」という場合、もし5年以内に事業を撤退・変更することになっても、損失を最小限に抑えられます。
【デメリット】
- 10年間の総費用は割高になる: 5年分を2回支払うと、10年分を一括で支払うよりも合計金額が高くなります。
- 更新手続きの手間と費用がかかる: 5年後に後期登録料の納付手続きが必要です。忘れてしまうと、せっかくの権利が消えてしまいます。
- 更新忘れのリスク: 最も注意すべき点です。特許庁から更新期限の通知は来ますが、住所変更などで通知が届かないケースもあります。うっかり忘れてしまうと、権利を失ってしまう可能性があります。
10年登録のメリット・デメリット
【メリット】】
- 10年間の総費用が割安: 5年登録を2回するよりも、トータルの費用を安く抑えることができます。
- 手続きの手間が省ける: 一度支払えば、10年間は更新手続きの心配がありません。本業に集中できます。
- 権利が長期間安定する: 10年間は権利が保護されるため、安心して事業に打ち込めます。更新忘れのリスクもありません。
【デメリット】
- 初期費用が高くなる: 10年分を一括で支払うため、最初の負担は大きくなります。
- 途中で事業をやめても費用は戻らない: もし数年でその商標を使わなくなったとしても、一度支払った10年分の登録料は返金されません。
◆【料金シミュレーション】実際いくら違うの?
では、具体的に費用はどれくらい違うのでしょうか。2025年6月現在の特許庁の料金(1区分の場合)で計算してみましょう。
| 5年登録(分割納付) | 10年登録(一括納付) | |
|---|---|---|
| 出願時印紙代 | 12,000円 | 12,000円 |
| 登録時印紙代 | 17,200円(5年分) | 32,900円(10年分) |
| 《初期費用の合計》 | 29,200円 | 44,900円 |
| 5年後の後期納付 | 17,200円(5年分) | 0円 |
| 【10年間の総費用】 | 【46,400円】 | 【44,900円】 |
※上記はご自身で手続きした場合の特許庁印紙代です。弁理士に依頼する場合は、別途手数料がかかります。
このように、10年間の総費用で比較すると10年登録の方が1,500円安くなります。区分数が増えれば、この差はさらに大きくなります。
◆【ケース別】あなたに最適なのはどっち?
これまでの比較を踏まえて、あなたがどちらを選ぶべきか、ケース別に見ていきましょう。
📝 5年登録がおすすめな人
- スタートアップや個人事業主で、初期費用を少しでも抑えたい人
- 新規事業で、今後の見通しがまだ不透明な人
- まずはお試しで商標登録をしてみたい人
👑 10年登録がおすすめな人
- すでに事業が安定しており、長期間その商標を使い続けることが確定している人
- 資金に余裕があり、総費用を少しでも抑えたい人
- 更新手続きの手間や権利失効のリスクを避けたい人
- 会社の社名や主力サービスの名称など、絶対に守りたい重要な商標を登録する人
◆ よくある質問(Q&A)
Q1. 途中で5年から10年に変更できますか? A1. 登録時に5年登録(分割納付)を選んだ場合、後から10年登録(一括納付)に変更することはできません。5年後の更新手続きの際に、次の存続期間を10年にするか5年にするかを選択することになります。
Q2. 更新を忘れたらどうなりますか? A2. 存続期間が満了しても、その後6ヶ月間の猶予期間があり、期間内に割増登録料を支払えば権利を維持できます。しかし、その猶予期間も過ぎてしまうと、商標権は完全に消滅してしまいます。
Q3. 10年登録して、3年で事業をやめたらお金は返ってきますか? A3. いいえ、一度納付した登録料は返還されません。
◆ まとめ
商標登録の5年と10年の選択は、どちらが絶対的に正しいということはありません。あなたの**ビジネスの「今」と「未来」**を考えて、最適な方を選ぶことが大切です。
- 初期費用を抑え、柔軟性を重視するなら → 5年登録
- 総費用を抑え、権利の安定性を重視するなら → 10年登録
この記事を参考に、ご自身の事業計画や資金計画と照らし合わせて、後悔のない選択をしてください。もし判断に迷う場合は、この記事を書いた遠山敬一弁理士に相談するのが良いでしょう。










