商標と会社名、その違いって何?横浜の特許事務所が教える意外と知らないビジネスの豆知識

「会社名で登記したから、この名前はもううちだけのもの!」 「新しい商品の名前、会社名と同じだから大丈夫だよね?」
ビジネスを始めるとき、多くの人がこのように考えるかもしれません。しかし、「会社名(商号)」と「商標」は、実は全くの別物。この違いを理解していないと、思わぬトラブルに巻き込まれてしまう可能性も…。
そこで今回は、起業家やビジネスパーソンなら知っておきたい「商標」と「会社名」の違いについて、ブログ形式で分かりやすく解説します。
まずは基本から!それぞれの役割って?
まずは、商標と会社名がそれぞれどのような役割を持っているのか、基本的な定義から見ていきましょう。
商標とは? – 商品やサービスの「顔」となる目印
一言でいうと、商標は**自社の商品やサービスを、他社のものと区別するための「目印」**です。
例えば、私たちがスマートフォンを買うとき、リンゴのマークを見れば「Apple社のiPhoneだな」と分かりますし、カフェで緑色の人魚のロゴを見れば「スターバックスだ」と認識しますよね。
このように、消費者が「これはあの会社の製品・サービスだ」と一目で分かるようにするための文字、図形、記号、ロゴマーク、あるいはそれらの組み合わせが「商標」です。最近では、音や動き、ホログラムなども商標として登録されています。
- 役割: 商品・サービスのブランドイメージや信頼を守る。
- 例: 商品名(例:「ポカリスエット」)、サービス名(例:「宅急便」)、ロゴマーク(例:ナイキのスウッシュマーク)
会社名(商号)とは? – 会社そのものを識別する「戸籍名」
一方、会社名は法律上「商号」と呼ばれ、**会社そのものを法的に識別するための「正式名称」**です。人間でいうところの「戸籍上の名前」と考えると分かりやすいでしょう。
会社を設立する際には、必ずこの商号を法務局に登記する必要があります。契約書や公的な書類には、この登記された正式な会社名が使われます。
- 役割: 会社という法人格を特定し、社会的な取引を円滑にする。
- 例: 「トヨタ自動車株式会社」「任天堂株式会社」
一目でわかる!商標と会社名の違いを徹底比較
では、具体的にどこが違うのでしょうか?目的、登録先、効力の範囲という3つのポイントで比較してみましょう。
| 項目 | 商標 | 会社名(商号) |
|---|---|---|
| 目的・役割 | 商品・サービスのブランドを守る目印 | 会社そのものを法的に識別するための名称 |
| 登録先 | 特許庁 | 法務局 |
| 効力の範囲 | 登録した商品・サービスの範囲で日本全国に及ぶ独占排他権 | 原則、同一市区町村で同一の事業目的の場合に他社の登記を排除 |
| 保護対象 | 文字、ロゴ、図形、記号、音、立体的形状など | 文字のみ(「株式会社」などの会社種類を含む) |
ポイント① 登録先と根拠法が違う!
これが最も大きな違いです。
- 商標: 特許庁に「商標登録出願」を行い、審査を経て登録されます。根拠法は商標法です。
- 会社名(商号): 法務局で「商業登記」を行います。根拠法は会社法です。
管轄する役所も、準拠する法律も全く異なるため、それぞれ別々に手続きを行う必要があります。
ポイント② 権利の強さが全く違う!
ビジネス上の権利として、商標権は非常に強力です。
商標権は、登録が認められると、日本全国でその商標を独占的に使用できる権利(専用権)と、他人が類似の範囲で使用することを禁止できる権利(禁止権)が与えられます。もし他社が勝手に同じ、あるいは似たようなロゴや名称を使い始めたら、使用の差し止めや損害賠償を請求することができます。
一方、**会社名(商号)**の登記による保護範囲は限定的です。同じ住所で同じ会社名を登記することはできませんが、住所が異なれば、極端な話、すぐ隣のビルに同じ名前の会社が設立される可能性もあります。
具体例で考えてみよう!
言葉だけだと少し難しいかもしれませんので、具体的な企業を例に考えてみましょう。
会社名(商号): ソニーグループ株式会社
この会社が提供する商品やサービスには、それぞれ固有の「商標」が付いています。
- 商標: 「SONY」「PlayStation」「BRAVIA」「WALKMAN」など
「ソニーグループ株式会社」という会社名は法務局に登記されています。しかし、彼らが「PlayStation」というゲーム機を他社に真似されずに独占的に販売できるのは、特許庁に「PlayStation」という商標を登録しているからです。
もし、あなたが「株式会社未来クリエイト」という会社を設立し、その会社で「SAKURA」という名前の化粧水を販売するとします。
- 会社名: 株式会社未来クリエイト
- 商品名(商標候補): SAKURA
この場合、「株式会社未来クリエイト」という会社名は法務局に登記します。しかし、それだけでは「SAKURA」という商品名を他社に使われるリスクは防げません。もし、他社が「SAKURA」という名前の化粧水を売り出しても、商標登録をしていなければ文句は言えないのです。自社の商品のブランドを守るためには、商品名である「SAKURA」を特許庁に商標登録する必要があります。
まとめ:なぜこの違いを知っておくべきなのか
会社名と商標の違いを理解することは、あなたのビジネスとブランドを守る上で非常に重要です。
- 会社名を登記しただけでは安心できない:会社名を法務局に登記しても、その名前を商品やサービスのブランド名として独占的に使える保証はありません。
- ブランド名は商標登録で守る:大切に育てていきたい商品名やサービス名、ロゴマークは、必ず特許庁で商標登録を検討しましょう。
- トラブルを未然に防ぐ:事業を始める前に、使いたい名前が他社の商標として登録されていないか調査することが、将来のトラブルを避ける第一歩です。
会社名は「会社の名前」、商標は「ブランドの名前」と覚えておくと良いでしょう。あなたのビジネスをしっかりと守り、成長させていくために、この2つの違いを正しく理解し、適切な手続きを行ってくださいね。










