商標の「識別力」って何?あなたのブランドを守るための必須知識

「自分の店の名前や商品のロゴ、ちゃんと商標登録できるかな?」
ビジネスを始める時、多くの人が考えるこの疑問。そのカギを握るのが、商標の「識別力」です。
でも、「識別力」って、なんだか難しそうですよね。
ご安心ください!この記事では、商標の「識別力」について、分かりやすく、そして詳しく解説していきます。
【このブログを読めば分かること】
- そもそも商標の「識別力」って何?
- どんな商標だと「識別力がない」と判断されるの?(具体例付き)
- 逆に「識別力がある」と認められる商標は?(具体例付き)
- 識別力がなくても、登録できる裏ワザ(?)はある?
- なぜ識別力がそんなに大切なの?
この記事を読み終わる頃には、あなたは商標の識別力マスターになっているはず!ぜひ最後までお付き合いください。
1. 商標の「識別力」とは? – なぜ必要なの?
そもそも商標って?
まず、基本の「き」。商標とは、あなたの商品やサービスを、他の人のものと区別するための「目印」です。お店の名前、商品のロゴ、キャラクターなどがこれにあたります。
「識別力」の正体
そして、本日の主役「識別力」とは、その「目印として機能する力」のことです。
考えてみてください。もし、あなたがリンゴを売るお店に「リンゴ」という名前をつけたとします。お客さんは、その名前を聞いて、あなたのお店と他のリンゴ屋さんを区別できるでしょうか?
答えは「No」ですよね。
このように、誰の商品・サービスなのか区別できない(識別できない)商標は、商標としての役割を果たせません。だから、商標登録するためには、この「識別力」が必要不可欠なのです。
2. 要注意!「識別力がない」と判断される商標たち(具体例)
特許庁の審査では、以下のような商標は原則として「識別力がない」と判断され、登録が認められません。どんなものが当てはまるのか、具体例と一緒に見ていきましょう。
(1) 普通名称
その商品やサービスの一般的な名前をそのまま使ったものです。
- 例:
- 商品「パソコン」に、商標「パソコン」
- サービス「ホテル」に、商標「ホテル」
- 商品「りんご」に、商標「りんご」
これらは、誰もが使う言葉なので、特定の人に独占させるわけにはいきませんよね。
(2) 記述的商標(品質、産地、用途などを説明するだけのもの)
その商品やサービスの品質、原材料、効能、用途、産地、販売地などを説明する言葉だけを使ったものです。
- 例:
- 商品「日本酒」に、商標「新潟」(産地)
- 商品「シャツ」に、商標「軽い」(品質)
- サービス「クリーニング」に、商標「早い」(品質)
- 商品「万年筆」に、商標「書きやすい」(効能)
- 商品「パン」に、商標「焼きたて」(品質)
これらも、商品の特徴を説明する上で誰もが使いたい言葉なので、独占は認められにくいのです。
(3) ありふれた氏名・名称
よくある苗字や、一般的な会社の名前などをそのまま使ったものです。
- 例:
- 「佐藤」「鈴木」「高橋」などの苗字
- 「株式会社〇〇商事」のような名称(※他に特徴がない場合)
同姓同名の人や、似たような名前の会社はたくさんあります。そのため、これだけでは誰のものか区別がつきにくいと判断されます。
(4) きわめて簡単で、かつ、ありふれた標章
**簡単な文字(ひらがな1文字、アルファベット1~2文字など)や、簡単な図形(〇、△、□など)**だけを使ったものです。
- 例:
- 「あ」
- 「AB」
- 「●」
これらはデザイン性が低く、目印としての力が弱いと見なされます。
3. これならOK!「識別力がある」と認められる商標たち(具体例)
では、逆にどんな商標なら「識別力がある」と認められやすいのでしょうか?
(1) 造語
世の中に存在しない、新しく作り出した言葉です。これは、他と区別する力が非常に強いとされます。
- 例:
- 「SONY (ソニー)」
- 「Google (グーグル)」
- 「Calbee (カルビー)」
これらの言葉は、その会社の商品・サービス以外では使われないため、強力な目印になります。
(2) 任意的商標
商品やサービスとは全く関係のない言葉を使ったものです。
- 例:
- コンピュータに「Apple (アップル)」
- 衣料品に「BEAMS (ビームス)」
- 自動車に「CROWN (クラウン – 王冠)」
商品と関係ないからこそ、特定のブランドを示す目印として機能します。
(3) 暗示的商標(サジェスティブ・マーク)
商品やサービスの特徴を、それとなく暗示・連想させる言葉です。記述的商標との線引きが難しい場合もありますが、直接的すぎないのがポイントです。
- 例:
- スポーツウェアに「ASICS (アシックス)」(ラテン語「健全なる精神は健全なる身体に宿る」の頭文字)
- 胃腸薬に「キャベジン」(キャベツに含まれる成分から連想)
- コーヒーフレッシュに「スジャータ」(お釈迦様に乳粥を供えた少女の名前から連想)
4. 諦めないで!識別力がなくても登録できる「セカンダリー・ミーニング」
「うちの商標、記述的商標かも…もうダメだ…」
そう思ったあなた、まだ諦めるのは早いです!
たとえ最初は識別力が弱いと判断される商標でも、長期間にわたって使い続けることで、「あ、あのマーク(名前)は、あの会社のものだね!」と多くの人に認識されるようになれば、例外的に登録が認められることがあります。
これを「使用による識別力の獲得」と言います。
- 例:
- 「BOSS」(缶コーヒー) – もともとは「ボス、長」という意味ですが、長年の使用でサントリーの缶コーヒーとして広く知られています。
- 「エリエール」(ティッシュペーパー) – フランス語で「翼」という意味ですが、大王製紙の紙製品ブランドとして定着しています。
ただし、これを証明するには、広告宣伝の実績や売上高、アンケート結果など、多くの証拠が必要になります。
5. なぜ「識別力」がそんなに大切なのか?
最後に、なぜ商標登録において「識別力」がこれほど重要なのかをまとめます。
- 登録できるかが決まる: 識別力がなければ、原則として商標登録はできません。
- 権利の強さが変わる: 識別力が強い商標ほど、他人にマネされにくく、強力な権利を持つことができます。
- ブランドを守る力になる: 強い識別力を持つ商標は、消費者の記憶に残りやすく、あなたのビジネスを他社と差別化し、ブランド価値を高める上で非常に重要です。
まとめ
商標の「識別力」は、あなたのビジネスの顔となる大切な「目印」が、その役割をしっかり果たせるかどうかを測るバロメーターです。
これから商標を考えようとしている方は、
- できるだけユニークなもの(造語など)を考える
- 商品やサービスを直接説明しすぎないようにする
ことを意識してみてください。
もし、自分の考えた商標が登録できるか不安な場合は、専門家である弁理士に相談することをおすすめします。
この記事が、あなたのブランド戦略の一助となれば幸いです。










